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真夜中のサーカス50

時間: 2020-03-21   
核心提示:赤い|衣裳《いしよう》 七ヒデが帰ってから十日ほどしたある日、在所の隣村に住んでいる|親戚《しんせき》筋の與五という老人
(單詞翻譯:雙擊或拖選)
赤い|衣裳《いしよう》 

ヒデが帰ってから十日ほどしたある日、在所の隣村に住んでいる|親戚《しんせき》筋の與五という老人が、ひょっこり良作を訪ねてきた。そのとき、良作は岸壁に近い枯草の空地に|筵《むしろ》を敷いて、|手斧《ちような》を研いでいたのだが、よろけるような足取りでゆっくりこっちへやってくる與五老人を目にしたとき、曇り日だったのに、なぜか突然、あたりがさっと翳ったような気がした。「|爺《じつ》ちゃ。」と口のなかで呟いて、彼は立ち上った。
與五老人は彼の目の前までくると、いきなり、
「一緒に村へ帰るべ。」
といった。だしぬけにそんなことをいわれても、わからない。黙っていると、
「ヒデが、死んだ。」
と老人はいった。
良作は、なにもいわずに目を瞠った。
「裏の栗林で、首を|吊《つ》って死んだ。」
老人はつづけてそういった。良作は口を動かしたが、喉から言葉が出てこなかった。
「お|前《め》から買って貰った鬼燈色のスカートを穿いとった。首には、貝殻を糸で|繋《つな》いだ首飾りを掛けとった。」
老人はなおもつづけていった。良作はぶるぶるとかぶりを振った。それから、ようやく言葉が出た。
「噓だ。そんなことって……噓だ。噓だ。」
「噓じゃね。」
老人はきっぱりといった。良作はかぶりを振るのをやめて、|呆《あき》れたように老人をみつめた。
「ヒデは、ポケットにお|前《め》から貰った手紙を持っとった。」
老人はそういって、乗馬ズボンのポケットから畳んだ手紙を引きずり出した。
「裏になんか書いてある。ヒデが書いたんじゃろう。」
良作は、手紙をひったくって、裏を返してみた。赤いボールペンで書いたらしい文字が、何行か並んでいた。けれども、それを持つ手がわなわなと|顫《ふる》えて、近視の人のように目に近づけなければ読むことができなかった。
  兄ちゃんから買ってもらった
赤いミニをはいてあるいた
だれもいない
だれも私を見てくれない
となりの村までいってみた
だれもいない
そのまたとなり村までいってみた
だれもいない
だれも私を見てくれない
私を見てくれる人が どこにもいない
 そう書いてあった。良作は茫然と老人をみつめた。老人は彼の手から手紙を抜いて、また乗馬ズボンのポケットに収めた。
「俺が、殺したのか?」
と、良作は呟いた。それから、両手で老人が著ている犬の毛皮の|襟《えり》を握って、揺さぶった。
「はっきりいってくれ、|爺《じつ》ちゃ。俺がヒデを殺したのか?」
「馬鹿なことはいわね方がいい。」と老人は落ち著いた聲でいった。「お|前《め》はヒデに鬼燈色のスカートを買ってやっただけだ。ヒデはそれを穿いて死んだ。それだけのこった。」
良作は、膝ががくがくして、いまにも地面に落ちそうだった。老人に促されて歩き出すと、うしろからひたひたとヒデの足音が追ってきた。彼は、立ち止まって、振り向いてみた。けれども、死んだヒデがそこにいるわけもない。
風が出て、岸壁の裾を洗いはじめた波の音であった。その岸壁のむこうには、あの日のヒデの橫顔のように、陰鬱に翳った海がひろがっていた。
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